商品名 | ヒューマログ | ノボラピッド | アピドラ |
一般名 | インスリン リスプロ | インスリン アスパルト | インスリン グルリジン |
効能又は効果 | インスリン療法が適応となる糖尿病 | ||
投与時点 | 食直前(15分以内) | 食直前 | 食直前(15分以内) |
注入時間 | 5秒 | 6秒 | 10秒 |
作用発現 | 15分未満 | 10~20分 | 15分未満 |
最大作用 | 0.5時間~1.5時間 | 1~3時間 | 0.5時間~1.5時間 |
作用持続 | 3~5時間 | 3~5時間 | 3~5時間 |
開封後期限 | 4週間 | ||
禁忌 | 本剤過敏症、低血糖状態 | ||
製造媒体 | 大腸菌 | 酵母 | 酵母 |
含有Zn | 酸化亜鉛 | 酸化亜鉛 | 無 |
FDA Approval | 1996 | 2000 | 2004 |
日本承認年 | 2001 | 2001 | 2009 |
製薬会社 | Eli Lilly | Novo Nordisk | Sanofi |
インスリンは51個のアミノ酸が集まったタンパク質だがお互いに重合しやすい。重合したままだとインスリン受容体に作用できないので単量体にバラけさせなければならない。
できるだけ早く単量体に移行させたり単量体の状態を安定させるように作られているのが超速攻タイプインスリン。
6量体→2量体→単量体
それまで使われていた速攻タイプインスリンの使用タイミングは食事の30分前だったが超速攻タイプは15分以内。投与タイミングは食直前。ただしノボラピッドは「15分以内」という具体的な数字は記載されていない。
血糖降下作用が発現しだすのは使用してから約15分から。なので投与してからご飯を食べるのが遅れると低血糖の危険性がある。
3剤の中ではアピドラがわずかに効果発現が早いが誤差の範囲。治療効果に差は無い。処方医はデバイスの使いやすさや製薬会社とのお付き合いの関係などで選んでいる。
【ヒューマログ】
世界初の超速攻インスリンとして1996年にFDA承認。
どのように製造しているかという大腸菌さんに作ってもらっている。
大腸菌にインスリン産生遺伝子を導入して菌内にインスリンを作らせリアクター内で遠心分離や酸塩基反応など企業秘密な処理をしてインスリンリスプロを大量生産している。もちろん大腸菌は無害化している。
構造式的な工夫としてヒトインスリンのB鎖28位プロリンと29位リジンを入れ替えている。
B鎖28位プロリンはインスリンが2量体へ重合するときに関与している。プロリンの位置を変えると立体構造が変化し2量体ができにくくなる。インスリンの作用時間の調整は詰まるところ単量体への移行時間。
デバイス的には0.5単位刻みで細かく投与量を調節できるミリオペンHDが2018年に発売された。
既に物質特許が切れバイオシミラーが登場しているが発売から27年経過した2023年でも17億ドル以上を売り上げている。
【ノボラピッド】
超速攻インスリンとして2番目に登場。
だが日本や世界での売上はヒューマログを上回っている。
アミノ酸改変部位はインスリンリスプロと同じくB鎖28位のプロリン部位。そこのプロリンをアスパラギン酸へ交換している。
デバイスのフレックスタッチが使いやすいと好評。だが需要が高まりすぎて出荷調整になったりもしている。
こちらも特許は既に切れていてサノフィからバイオシミラーが発売されている。ノボラピッドが手に入らなければバイオシミラーを使ってみてもいいかもしれない。
ジェネリック医薬品は個人的に信用していないがバイオシミラーを製造しているのは先発品メーカーなので。
【アピドラ】
3番目の超速攻タイプインスリンとして2008年に登場。
ヒューマログとノボラピッドのいう超強力な製品が既に足場を築いていた市場に割って入ったのがアピドラ。
構造的には2か所を改変。B鎖3位のアスパラギンをリジンに、B鎖29位のリジンをグルタミン酸に置換している。そうすることで単体が重合するのを防いでいる。
他の2剤にない特徴として製剤に亜鉛を含んでいない。亜鉛が含まれるノボラピッドやヒューマログは製剤中に2量体として存在しているがアピドラは単量体として存在する。
インスリン受容体には単量体でないと作用しないので乖離する時間が不要なアピドラは早い。
そんな工夫して作られたアピドラだが糖尿病治療にそこまで差がでるほどではない。なので先行2製品と比べ売り上げシェアは劣る。
糖尿病治療薬だとDPP4阻害薬でも最初に登場したジャヌビアがなんだかんだ言ってシェアを最も取っている。同じクラスの薬で7年遅れは厳しい。