ノボ・ボルディスクはデンマークに本社を置く製薬会社。
時価総額5500億ドル(約82兆円)で欧州最大の会社であり世界の製薬会社だと米イーライリリーに次ぐ世界二位の製薬会社。
1920年代に発見されたインスリンを速攻で製剤化して販売を開始した会社が3つある。その3つの会社の内の一つがノボ・ボルディスク。
これまでの100年はそのインスリン製剤で成長してきたがこれからはインスリンではない新しい薬でノボ・ボルディスクは成長していく。それが肥満症治療薬。
糖尿病患者より肥満症の患者数が多いので大きく成長していく。
ノボノルディスクの歴史
1869年:ベルリン大学の医学生パウル・ランゲルハンスがインスリンを分泌する膵細胞を発見
1905年:ギリシャ語で島を意味する“インスラ”に由来の言葉「インスリン」が誕生
1921年:トロント大学でFrederick Grant Banting および Charles Bestによりインスリンが世界で初めて抽出される。
1923年:アウグスト・クロウとハードゲン博士がノルディスク インスリン研究所を設立
レオファーマの財政的支援を受けていたので北欧で初のインスリンは「インスリンレオ」という商品名になった。
1925年:ハラルド・ペダーセンとトーバル・ペダーセンがノボ テラピューティスク研究所を設立
1926年:亜鉛がインスリンを結晶化するのに必要であると発見
1932年:アウグスト・クロウが糖尿病患者を専門に治療するステノ糖尿病センターを設立
1936年:インスリンの効果を持続される物質プロタミンを発見
インスリンは酸性物質でpH7台のヒト血中ではすぐに溶けてしまい作用時間が短く1日に何回もインスリンを打たなければならない。
しかし塩基性物質のプロタミンを結合させることで酸性度を下げて体内で溶ける速度を低下させることに成功した。
1946年:長期的な作用で中性インスリンNeutral Protamine Hagedornを開発
1950代:抗生物質ペニシリンを製造しこの時の酵素技術が後に完全なヒトインスリン製造に繋がる。
1953年:持続型亜鉛懸濁インスリン製剤「レンテ」シリーズを開発
1958年:英国人サンガーがインスリンのアミノ酸配列を決定しノーベル化学賞を受賞
1973年:成長ホルモンNanormonを発売
1974年:コペンハーゲン証券取引所に株式を上場
1979年:ノースカロライナ州にフルクトース生産工場を設立
1981年:ニューヨーク証券取引所に株式(ADR)を上場
1982年:完全なヒトインスリンの合成に成功
人間と豚のインスリンはアミノ酸一か所が異なる。故に人間に豚のインスリンを注射するとアレルギー反応が起こりやすい。
そこで酵素トリプシンを用いたペプチド転移反応法によりブタインスリンのB鎖C末端のアラニンをトレオニンに交換してヒトインスリンと全く同一の物資を作ることに成功。
1983年: Nordisk Infuserというインスリンポンプ機器を発売
1985年:患者自身で簡単にインスリン注射ができるNovoPenを発売
1986年:デンマークの製薬会社Ferrosanを買収。このFerrosanが開発中の薬に抗うつ薬パロキセチンがあった。
1989年:合併によりノボ ノルディスク社が誕生
1996年:血友病治療薬NovoSevenを開発
1999年:液体成長ホルモンSimpleXxを開発
2000年:日本で血友病治療薬ノボセブンが発売
2001年:遺伝子組み換えインスリンであるノボラピッド開発
2003年:二相性放出インスリンであるノボミックス開発
2004年:長時間作用型タイプのの遺伝子組み換えインスリンであるレベミル開発
2009年:1日1回のGLP-1受容体作動薬ビクトーザを開発
2018年:週1回のGLP-1受容体作動薬オゼンピックを厚生労働省が承認
2021年:世界初の経口GLP-1作動薬リベルサスが承認
2023年:肥満症治療薬ウゴービ承認
売り上げデータ(単位:億円)
売り上げ | 成長率 | 純利益 | マージン | |
00年 | 4,478 | 689 | 15.4% | |
01年 | 5,112 | 14% | 791 | 15.5% |
02年 | 5,436 | 6% | 900 | 16.6% |
03年 | 5,718 | 5% | 1,056 | 18.5% |
04年 | 6,346 | 11% | 1,096 | 17.3% |
05年 | 7,380 | 16% | 1,282 | 17.4% |
06年 | 8,469 | 15% | 1,410 | 16.7% |
07年 | 9,144 | 8% | 1,863 | 20.4% |
08年 | 9,954 | 9% | 2,108 | 21.2% |
09年 | 11,166 | 12% | 2,354 | 21.1% |
10年 | 13,286 | 19% | 3,148 | 23.7% |
11年 | 14,503 | 9% | 3,737 | 25.8% |
12年 | 17,056 | 18% | 4,685 | 27.5% |
13年 | 18,269 | 7% | 5,505 | 30.1% |
14年 | 19,413 | 6% | 5,789 | 29.8% |
15年 | 23,462 | 21% | 7,620 | 32.5% |
16年 | 24,435 | 4% | 8,290 | 33.9% |
17年 | 24,417 | 0% | 8,335 | 34.1% |
18年 | 24,446 | 0% | 8,444 | 34.5% |
19年 | 26,674 | 9% | 8,515 | 31.9% |
20年 | 27,750 | 4% | 9,211 | 33.2% |
21年 | 30,779 | 11% | 10,440 | 33.9% |
22年 | 38,682 | 26% | 12,138 | 31.4% |
23年 | 50,772 | 31% | 18,293 | 36.0% |
2015年から2020年までは一桁成長だったが2021年以降は二桁成長へ。
なぜ急成長しているかと言えばオゼンピックとリベルサスというセマグルチド製剤のおかげ。Ⅱ型糖尿病治療薬として販売しているのだが体重が減少するという思わぬ副産物が発見されダイエット目的で使用する人が世界で急増しオゼンピックが爆売れしている。
じゃあ具体的にどれだけ売れてるのかのデータが↓である。
オゼンピックとリベルサスの売り上げ(四半期売り上げ・億円)
オゼンピック | リベルサス | |
2020Q1 | 1,038 | 50 |
2020Q2 | 1,056 | 77 |
2020Q3 | 1,186 | 99 |
2020Q4 | 1,351 | 182 |
2021Q1 | 1,455 | 159 |
2021Q2 | 1,624 | 206 |
2021Q3 | 1,942 | 293 |
2021Q4 | 2,340 | 398 |
2022Q1 | 2,628 | 450 |
2022Q2 | 3,134 | 474 |
2022Q3 | 3,580 | 657 |
2022Q4 | 3,708 | 885 |
2023Q1 | 4,289 | 951 |
2023Q2 | 4,827 | 871 |
2023Q3 | 5,222 | 981 |
2023Q4 | 6,566 | 1,290 |
上のグラフは3か月毎の売り上げデータ。
直近の3か月でオゼンピックの売り上げは6500億円。この成長速度だと2024年のオゼンピック売り上げは3兆円を超える見込み。経口バージョンのリベルサスも年間5000億円の売り上げは軽く超える見込み。
ノボ・ボルディスクの株価
肥満症治療薬が絶好調で株価も絶好調。
現在は直近1年の純利益1兆8000億円に対して時価総額82兆8600億円。
純利益に対して時価総額は46倍。PER=46倍
S&P500企業の平均は過去を調べると15倍~20倍なのでこのPER46倍というのは割高といえる。
しかし
ノボ・ボルディスクはこれから肥満症治療薬の急成長により利益が急拡大予定。なのでPER46倍が高いとは一概に言えない。
自分の投資判断の一つとしてPER20が基準としてそこに年平均成長率を足すというのがある。
成長率は直近だと前年同期比で30%あるので
20+30=50
つまりPERが50倍以下の今は適正範囲内かと思う。