($ in millions) | Q/Q | |
2024Q3 | 7,429 | 17% |
2024Q2 | 7,270 | 16% |
2024Q1 | 6,947 | 20% |
2023Q4 | 6,607 | 21% |
2023Q3 | 6,338 | 17% |
2023Q2 | 6,271 | 19% |
2023Q1 | 5,795 | 21% |
2022Q4 | 5,450 | 19% |
2022Q3 | 5,426 | 20% |
2022Q2 | 5,252 | 26% |
2022Q1 | 4,809 | 23% |
2021Q4 | 4,577 | 15% |
2021Q3 | 4,534 | 22% |
2021Q2 | 4,176 | 23% |
2021Q1 | 3,899 | 19% |
2020Q4 | 3,993 | 28% |
2020Q3 | 3,715 | 21% |
2020Q2 | 3,388 | 29% |
2020Q1 | 3,284 | 45% |
2019Q4 | 3,111 | 45% |
2019Q3 | 3,070 | 63% |
2019Q2 | 2,634 | 58% |
2019Q1 | 2,269 | 55% |
2018Q4 | 2,151 | 66% |
2018Q3 | 1,889 | 80% |
2018Q2 | 1,667 | 89% |
2018Q1 | 1,464 | 151% |
2017Q4 | 1,297 | 169% |
2017Q3 | 1,047 | 194% |
2017Q2 | 881 | 181% |
2017Q1 | 584 | 135% |
2016Q4 | 483 | 126% |
2016Q3 | 356 | 124% |
2016Q2 | 314 | 185% |
2016Q1 | 249 | 200% |
2015Q4 | 214 | 289% |
2015Q3 | 159 | |
2015Q2 | 110 | |
2015Q1 | 83 | |
2014Q4 | 55 |
癌治療において免疫チェックポイント阻害薬という新しい概念を作り出した薬でありメルク社にとって最重要の薬。2023年の売上は250億ドルで世界で最も売れた薬。肥満治療薬として話題のセマグルチドやチルゼパチドよりも売れた。
メルクはキイトルーダ登場前でも大きな製薬会社だったが、それは高脂血症治療薬ゾコールや高血圧薬レニベースといった生活習慣病領域の薬が売れていたから。
キイトルーダという抗がん剤を得たことで世界一の抗がん剤メーカーにメルクはなった。
キイトルーダの成分ペンブロリズマブを開発していたのメルクではなくオランダの製薬会社オルガノン。そのオルガノンを2007年にシェリングプラウが買収。更に2009年にメルクがシェリングプラウを買収し幸運にもキイトルーダを手に入れた。
2009年時点でキイトルーダが将来毎年100億ドル以上稼ぐとはメルクもシェリングプラウも思っていなかった。実際メルクが買収完了した時の査定で優先順位が低くライセンスアウトまで検討された。
しかしライバルの製薬会社BMS社が同じ免疫チェックポイント阻害薬であるヤーボイ(イピリムマブ)の臨床試験で有望な結果を出したことで状況は一変。
抗がん剤の開発リソースが少ないメルクが総力を挙げてキイトルーダの開発に注力することになり今の大ヒットに繋がった(メルク社2023年度売上の4割以上をキイトルーダが稼いでいる)。
手術や化学療法、放射線照射といった癌治療を行っても進行・再発してしまった癌に対して新しい治療オプションをこのキイトルーダは提供している。臨床試験のデータを見るとOSの延長は数カ月程度だが2年生存率や5年生存率で二桁の違いを生み出している。
キイトルーダの主だった米国特許は2028年に失効するが皮下注射製剤バージョンを開発しており承認されたら特許期間が延長される。
ちなみに買収されたオルガノンは2021年にスピンアウトされて再び独立した会社となった。もちろんキイトルーダはメルク社のもので新生オルガノンの薬ではない。
商品名 | キイトルーダ |
一般名 | ペムブロリズマブ(遺伝子組換え) |
薬効分類名 | 抗悪性腫瘍剤 |
クラス | ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体 |
効能・効果* | 悪性黒色腫、非小細胞肺癌、古典的ホジキンリンパ腫、尿路上皮癌、固形癌(MSI-High・TMB-High)、腎細胞癌、頭頸部癌、食道癌、結腸・直腸癌(MSI-High)、乳癌、子宮体癌、子宮頸癌、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、胃癌、胆道癌 |
キイトルーダは、PD-1(Programmed Cell Death Protein 1)という受容体に結合し、がん細胞が発現するPD-L1(Programmed cell Death ligand 1)との結合を阻害する。これにより、T細胞の免疫反応が持続し、がん細胞への攻撃が強化される。
PD-1はT細胞表面に存在する受容体であり、免疫応答を抑制する役割を持つ。一方、PD-L1は多くのがん細胞表面に発現し、PD-1と結合することでT細胞の攻撃を防ぐ。キイトルーダはこの結合を阻害することで免疫系ががん細胞を攻撃できるようにする。
キイトルーダの効果にはがん細胞のPD-L1発現率が重要になっている。なのでその発現率を調べるためのコンパニオン薬としてアジレント社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」が存在する。
キイトルーダの主なライバル薬はオプジーボ(一般名:ニボルマブ)。
両者は同じPD-1阻害薬だが、適応疾患や使用方法に違いがある。オプジーボはより広範な適応症を持つ一方で、キイトルーダはPD-L1陽性患者に特化した治療法として優位性を持つ。
オプジーボが失敗したCheckMate-026試験(非小細胞肺がん1st line)ではPD-L1発現率が5%以上の患者を対象としていたがキイトルーダのKEYNOTE-024試験(非小細胞肺がん1st line)ではPD-L1発現率が50%以上の患者に限定して成功した。
製薬会社からしたら患者を最初から選別するとそれだけ薬が売れなくなるからデメリットもあるのだが売上を見るとオプジーボよりキイトルーダの方が売れているのでメルクの戦略は成功した。
オプジーボの投与間隔は2週間 or 4週間だがキイトルーダの投与間隔は3週間 or 6週間なので患者の負担的にはキイトルーダに分がある。
1. 患者バックグラウンド
キイトルーダ+化学療法群 | プラセボ+化学療法群 | |
---|---|---|
患者数 | 404 | 201 |
人種 | 主に白人、アジア系 | 主に白人、アジア系 |
性別 | 男性:52%、女性:48% | 男性:54%、女性:46% |
持病の有無 | あり:60% | あり:58% |
持病名 | COPD、糖尿病、高血圧など | COPD、糖尿病、高血圧など |
2. 試験デザイン
- 対象疾患: 非小細胞肺癌(NSCLC)
- 対象患者:EGFR、ALK融合遺伝子変異陰性、進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺癌
- 試験デザイン: 二重盲検、ランダム化対照試験
- ベース治療:ペメトレキセド+シスプラチン or カルボプラチン
- 対照薬: プラセボ
- 主要評価項目: 全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)
3. 臨床試験の結果
ベース治療 | プラチナ併用化学療法 | プラチナ併用化学療法 |
---|---|---|
キイトルーダ | プラセボ | |
被験者数 | 404 | 201 |
全生存期間 (OS) | 22.0ヵ月 | 10.6ヵ月 |
無増悪生存期間 (PFS) | 9.0ヵ月 | 4.9ヵ月 |
12カ月生存率 | 69.8% | 48.0% |
24カ月生存率 | 45.7% | 27.3% |
4. 副作用
- 実薬群:
- 重篤な副作用: 発熱性好中球減少症(23例)、血小板減少症(13例)
- 投与中止に至った副作用: 肺臓炎(10例)、急性腎障害(4例)
- プラセボ群:
- 重篤な副作用: 貧血(11例)、血小板減少症(6例)
- 投与中止に至った副作用: 肺臓炎(3例)
5. 考察
KEYNOTE-189試験は、キイトルーダと化学療法の併用が非小細胞肺癌患者において全生存期間および無増悪生存期間を有意に延長することを示した。
実薬群OS中央値が22.0ヵ月に対し、プラセボ群では10.6ヵ月。
無増悪生存期間も実薬群で9.0ヵ月とプラセボ群の4.9ヵ月を大きく上回った。
副作用については、実薬群で重篤な事象が多く見られましたが、これは免疫療法特有の副作用であり治療効果とリスクのバランスを考慮する必要性を示唆している。
特に間質性肺炎などが致命的な副作用が報告されているので治療中に注意深くモニタリングするべき。この臨床試験以外にもキイトルーダは数多くの臨床試験を行っている。